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ペット業界に身を置く者として、また、様々な動物種を飼育してきた一飼育者として思う、ペットについてのアレコレソレ。

金魚飼育は難しい

私は、今まで数多くの魚を飼育管理してきましたが、未だに金魚だけは難しいと感じます。

はい、熱帯魚や海水魚よりも、ずっと。もしかしたら、爬虫類や哺乳類含めたペット動物全体で考えても、難しい部類に入るかもしれません。

金魚が多くの熱帯魚や海水魚と違うところは、改良品種としての歴史が恐ろしく長いってこと。
もともとは、緋鮒というフナの突然変異を掛け合わせ、その養殖の過程で発生した奇形をさらに強調させたり組み合わせたり。

そうして作られたのが、今ある金魚の様々な品種です。

ほとんどの野生種ってのは、何万年何千万年という時間をかけて、強いものだけが生き延びて子孫を残すいわゆる「淘汰」という過程を経て、現在に至ります。
その淘汰で得た体質の強さや環境への適応力というのは、特に手を加えなければ「養殖」されてもそうそう失われるものではありません。むしろ「飼育される」という新たな環境への順応性すら生まれるほどです。

ところが金魚という魚を繁殖させる際は、その「淘汰」を人間が代わりに行う「選別」という過程を踏みます。
自然下の淘汰と違うのは、まず何よりも見た目が優先されます。目的とする形質をいかに表現しているかに一番の重きが置かれているわけです。

本来自然下ならば生き延びることの無かったはずの奇形。

それらを使って子孫を残そうとするわけですから、体の強さ丈夫さは二の次です。
ですから、例えば見た目は同じ琉金でも、本来自然下なら真っ先に死んでしまう(淘汰されてしまう)ような消化器系が弱い子やら内分泌系が弱い子もいれば、また逆にめちゃくちゃ丈夫な子なんかも時には混ざるわけです。

奇異な外見を選別交配により固定してきたことと引き換えに、「体質の均一性」を犠牲にしてきたのが金魚という魚なのです。(これは、犬も近い。だから犬にはスタンダードがあり、スタンダードを維持することで体質の均一性も図ろうとしている)
だから、同じお祭りで掬ってきた金魚でも、「何もしてないけど10年以上生きてるぜ」なんて話や「金魚掬いの金魚はいつもすぐ死んじゃう」という両極端な話が存在するわけです。
そういう、なかなか外見で判断できない弱さを博打的に内包していることが、金魚飼育の難しさの原因です。
セオリーが通用しない部分が多いのです。
熱帯魚や海水魚なんてのは、ある程度設備にお金かけてセオリー通りのことさえやっていれば、大抵の種類は飼えちゃいます。
ところが金魚はそうはいかない。
どんなに高価なフィルターや水質調整剤使おうが、駄目な時は駄目、病気になる子は病気になるし、治らない子は何やっても治らない。

また、病気についてアドバイスを求められることも多い魚なのですが、これがまた難しい。
金魚の飼い方は熱帯魚や海水魚のように定番化された飼い方というのが無く、睡蓮鉢に泳がせたり、金魚鉢だったり、水槽で飼うにしても簡素な投げ込みフィルターだけの場合や、外部フィルターにヒーター完備など、みなさん思い思いのスタイルで飼育されています。
治療法や予防法を伝える前に、そうした飼育環境をひとつひとつカウンセリングしておかないと、適切な方法というのがかなり違ってきてしまうんですね。
睡蓮鉢ならほっといてもいいような症状も、水槽飼育では致命的になる、といった具合です。

あと、意外と盲点なのが「金魚は変温動物」ということ。変温動物ということは、新陳代謝の量や早さが水温(外気温)で変わるということなんですが、多くの飼育者がそんなの意識しないで飼ってるのが現状です。

「変温動物だと何が違うの?」
水温が下がると体温が下がります。体温が下がると運動量が減り、食欲も落ち、消化も悪くなります。さらに免疫力も落ちます。そうした変化があるのに、秋口など水温下がる時期に、それまで通りに餌をあげていたりすると、餌を食べ残してその食べ残しが水質を悪化させたり、食べちにしても消化不良を起こしてしまいます。免疫力も下がっているわけですから、これはいつ病気になってもおかしくない。
変温動物を保温せずに飼育しようとするなら、季節に応じた給餌量の調節や、餌の種類の変更などに気をつけなければならないのです。
なので、私は室内で飼育するならヒーターの設置をオススメするんですけど、たかが金魚と考える方はなかなかそこまでしてくれません。
当然、季節により代謝や免疫力に違いが出るわけですから、トラブル時の対処も季節により異なります。
その辺が、金魚飼育にアドバイスする際のハードルを高くしてるんですね。

まとめると
・個体差が激しい
・飼育環境が飼育者により様々
・季節により対処方法が変わる
といったことになります。

あと、よく金魚鉢で金魚を飼育しようとする方がいますが、はっきり言って難易度は高いです。
もともと金魚鉢というのは、江戸時代に金持ちの旦那衆が、自宅から自慢の金魚を持ち寄り見せびらかすための移動目的の容器が始まり。


こんなの。

ガラス自体が贅沢品だったので、今の丸い金魚鉢が一般庶民に普及したのは明治以降です。

そうした品種改良の歴史や、飼育の難しさや奥深さの割りに軽く見られてることなんかを考えると、金魚ってなんだか憐れで儚い魚なんだなあと感じませんか?

その「憐れ」とか「儚さ」それこそが、日本人の美意識にマッチし古来から愛され続けた理由なのかもしれません。
某映画で、花魁と金魚のイメージをダブらせた表現は、なるほどなと思いました。

そういえば鱗と憐って似てるね。
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  1. 2012/05/15(火) 17:28:38|
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